狭い庭にも花が咲き始めた。春めいた陽差しがなんとなく心を落ち着かせてくれる。故郷に父を見舞った。子供還りしつつある父に対し、まるで自分が親のような思いで言葉を掛けた。壊れてしまった父とお互いが親子であることを理解し、認知しうる言葉で語りあうことは永遠に来ない。最後まで人生はわからない。脳が崩壊しつつある中で、我の顔を見て涙をこぼして喜ぶ父であるが、でも我の名前は忘れてしまった。流動食となり、痰を吐けず、骨と皮だけになって、でも生きている。帰ろう、帰りたいと懇願する父に何も語れない自分。父の人生の最後にこのような舞台を用意した神を呪おう。我は神を呪う。